西澤作品の再読を試みているわけですが、いくら好きな作家とはいえ続けて読むと、「西澤節」とでも言えるような一人称の地の文の台詞回しや根底にあるジェンダーなどのテーマが鬱陶しくなるだろうことと、それをすると一向に溜まっていく積読が消化できないことが容易に想像できました。
そこで、積読を消化しつつ西澤作品を再読するため、西澤作品→積読→西澤作品→積読→・・・というサイクルをすることにしました。
順調にいけば、20冊ぐらい積読が消化できるかしら、という甘い考えもありますが、少なくともこのプロセスを設けたからこそ、長いこと積読だった『白夜行』が読めました(^^;
さてそれぞれの感想をカンタンにまとめていきます。
*太田忠司『狩野俊介の記念日』
前作から4年と書いていたかな、そんなに経つのかぁ。
それよりもこの作品で、作中の世界がようやく一年を迎えたという「事実」に正直驚きました。最初の作品から13年。ぼくが最初に手に取った『狩野俊介の冒険』*1からも10年程度でしょうか。
シリーズ開始当時から(霞田兄妹のシリーズと真逆に)パソコンなどの情報機器が存在しない世界として描かれていますが、本作においてもパーティを飛び出した俊介を探す野上さんたちの行動も携帯電話とか持っていたら変わるよなぁと思うシーンもありました。
さすがに13年前に携帯電話が物語に登場するとも思えませんが、その辺のある種「ファンタジック」な縛りがこの作品の魅力の一つなのかもしれません。
さて、『狩野俊介の~』という表題から分かるとおり、短編集*2であり、それぞれ俊介にとっての記念日(?)を扱っています。どんな記念日なのかということについては作品を読んでいただくとして。
最近の作品の傾向からも分かっていたことですが、野上さんも俊介もアキに振り回されまくりですな(^^;
そこに遠藤寺美樹まで加わって、稀代の名探偵たちも女性陣にはかなわない模様。その辺も楽しめる要素になっておりまする。
ちなみに最後の短編を読んでいて、天野こずえの『AQUA』[[『ARIA』:ASIN:4861270626]に時折出現するエピソードを彷彿したのはぼくだけでしょうか(^^;
*西澤保彦『瞬間移動死体』
初読時は多分、大学二回生の春だったはずなので、かれこれ8年近く前の話になるのかな。妙な感慨にふけってしまいます(^^;
さて、メイントリックというのでしょうか、その部分について微妙に覚えていたり忘れていたりしたので、かなり楽しめました。伏線をキレイに貼ろうとする努力とかも見えたり(笑)
今回再読してみて、SFな設定・アメリカにおける日本人像・ジェンダー問題・レイプなど「西澤作品らしい」パーツが随所に取り入られていることがよく分かりました。
この再読を続けていけばある程度確信を持って言えると思いますが、おそらく初期西澤作品の集大成であり、次のステージらしきもの(『七回死んだ男』『人格転移の殺人』の"呪縛"からの脱出の模索?)への橋頭堡になったものと言えるのではないか?という気がします。
この辺はまだもやもやしている部分があるので、またまとめたいと思います。
*東野圭吾『白夜行』
それぞれの登場人物にたいして感情移入はできなかったんですが、登場人物たちが「彼ら」に巻き込まれ飲み込まれていく様、猥雑な「大阪」の姿、そして昭和の終わりから平成の頭にかけての年月の流れ、そういうものを綯い交ぜにした年代記、それに圧倒されました。逆に言えばそれだけだったかも。面白いのは面白いんだけど。
昨日も書きましたが、『秘密』のほうが絶対に好きです。
*西澤保彦『死者は黄泉が得る』
初読時、ラストが理解できませんでした。栞がエピローグのところで挟まっていたし(笑)、なんども読み返した記憶がある。
そして今度こそという意気込みで読みましたが・・・。
やっぱり最後が理解できない!
誰か謎解きしてください。お願いします・・・。