帰りに読む本が無くて、ふと立ち寄った書店で発見したのがこの『方舟は冬の国へ』。
リアル書店の一覧性*1をなんとかamazonとかで実現したいもんですが(^^;;
あの不思議シチュエーションミステリィの数々を書き上げてきた著者をして、
非日常的、かつ非現実的な物語という言葉において、本書『方舟は冬の国へ』は、これまでのわたしの著作の中でももっとも「ありえない話」になっています(以下略)
と言わしめる作品。
まぁ「ありえなさ」では講談社ノベルス初期やカッパノベルスの諸作と同等だと思いますが(笑)、「一ヶ月間、別の人間として、見知らぬ女性と少女と仲睦まじい三人家族を装い、盗聴器と監視カメラで埋め尽くされた家で滞在する」という密室劇としてのシチュエーションの面白さはかなり上位に位置するんではないでしょうか(^^;
書き下ろしではなく雑誌連載であったことが不幸に作用して(特に終章の)展開のゴリ押し感が出ているのは否めませんが、三人の関係の変化のありようがなんとも良く、帯などの惹句から引っ張ると「愛おしい」というのがピッタリ当てはまる。
ミステリィとしては弱いところではあるんだけど、その辺は「愛おしさ」で相殺(笑)
願わくばもう少し彼らの「夏休み」を見ていたかった、そう思える一冊です。
- *1: 電子辞書類全般も言えることですが、そのものズバリの情報だけだと何だか味気ないんですよね。前後の単語やら、同じページにこんな言葉が載っているとか、この例文楽しいとか、そういう感覚を楽しめないし。いわゆるエンサイクロペディア・プロムナードを楽しむこともできませんし。