黒田研二の新刊『霧の迷宮から君を救い出すために』が出ていたので、さっそく読んでみた。
設定の系統としては名作『今日を忘れた明日の僕へ』と同等に後天的に身体機能の一部を失った主人公が「そうなる」に至った経緯や真相を探すというもの。 うがった見方をすれば著者自らが二匹目のドジョウを掬おうとしているわけですが、ここは好意的に「縛り」の入った不連続のシリーズモノと解釈したいと思います(笑)
今回の主人公は何者かにおそわれて動体視力を失っているという設定。静止しているモノはそのまま見えるが、動くモノを一定時間たった後じゃないと認識できないということで、前回認識したモノと現状異なる部分は白い霧がかかったような見え方をするという微妙にデジタルな状態なんですが、これがもう分かりづらい(笑)
さんざん情景描写がされるんですけど、状態が把握しにくいので物語にのめり込めないんですよね。 短期記憶障害をあつかった『今日を忘れた明日の僕へ』の場合は「昨日のことを覚えていない」という至極簡単なルールだっただけにシンプルに構成されていたと思うんだけど、今回のはネタありきという気がしてならない。
あと第一部の手前の2ページは敢えて挟まなくても良かったと思えますよ。はさむならアーミーナイフを振り上げたところからだけのほうが効果的のような。
仕掛けもキャラクタも非常に黒田研二的な作品であったけど、ちょっと残念でした。