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西澤保彦『複製症候群』読了。

ちょっとご無沙汰していた西澤作品の再読の続きということで、いったんタックのシリーズをはなれて、ノンシリーズものから『複製症候群』を選んでみました。

『複製症候群』

そもそもこの作品の初読時というのは運が悪いというのか、『瞬間移動死体』を読み「こんなおもしろい作家がいたとは!」とばかりに過去作品を立て続けに読んだ後に上梓されたという感じなのです。 『七回死んだ男』『人格転移の殺人』のような名作やら『殺意が集う夜』『完全無欠の名探偵』のようなエキセントリックなものまで読んでいたからどうしても期待が大きく膨らまないわけがない。 そんなわけで「なんだかイマイチだなぁ」という印象が残ったわけで、その後読み返されることもなかった・・・というカンジ。

しかし、再読してみれば、キレイにキャラクタの葛藤や謎が配置された佳作なので、ガガガっと読み耽ってしまいました。 西澤保彦の描く少年たちはどこか年齢にそぐわない価値観を持っているあたりがすごくリアリティがあって、好きです。この作品の登場人物たちもそうです。ロクの自虐的な価値観や見得を張る性格というのは如何にも!という(^^)

ところが、どうも近作で少年を主人公に据えた作品というのがほとんどなく(まぁ例外といえば『神のロジック・人間のマジック』なんだけど・・・ねぇ?(^^;)、作品としての価値があがっているような気がします。

この作品、ミステリィとしていくつかの仕掛けはあるんですけど、どちらかといえば「ストロー」という結局由来や存在理由すら説明されないまま終わってしまう、SF的ガジェット(SFというのは何らかの科学的な理由付けがされるように思えるから、どちらかというとフシギ系ガジェットなのかもしれない)によって生まれる「コピー人間」に端を発するアイデンティティを軸とした人間ドラマという色合いも濃いです。 その辺が初読時に物足りないなぁと思ったのかもしれません。

ともあれ、謎主体というミステリィを期待するとちょっと肩すかしに感じるかもしれませんが、小説としては十二分に楽しませてくれる作品だと思います。

『瞬間移動死体』 『七回死んだ男』 『人格転移の殺人』 『殺意が集う夜』 『完全無欠の名探偵』 『神のロジック・人間のマジック』

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 じつは僕は、〈ミステリ・ファン〉である前に〈SFファン〉だったりします。  ポー、ドイル、ルブラン、クイーン、カー、クリスティー、チェスタートンと共に、  ウェルズ、ブラッドベリ、アシモフ、クラーク、ハインラインなどで育ちました。 アイザック・アシモ... [詳しくはこちら]

コメント (1)

はじめまして!
複製症候群、悪くないですよね。
確かに〈ミステリ〉としてはもの足りない面もあるかもなのですが、
作品の雰囲気自体が結構好きだったりします。
トラバさせていただきますね。
今後ともよろしくお願いいたします。
それではまた~。

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